「自然言語処理」査読要領

2010.1 言語処理学会 論文誌編集委員会
2011年5月1日 改訂
2012年9月10日 改訂
2014年12月19日 改訂
2016年3月18日 改訂
2018年1月15日 改訂
2018年2月7日 改訂
2019年9月1日 改訂
2021年3月15日 改訂
2021年11月17日 改訂
2022年12月21日 改訂

本要領は,学会誌「自然言語処理」への投稿論文(論文,技術資料,および解説論文.以下「論文」という)の査読の作業手順について,編集委員会,査読者,および著著の役割を定めたものである.なお,論文以外の投稿原稿と依頼原稿は担当編集委員1名が閲読し,必要に応じて著者に修正を求めた上で,編集委員会で採否を決定する.


1. 投稿の受理

編集委員会事務局(以下、事務局と略記)は,受付日と受付番号を記入した受領通知を著者に送付する.ただし,投稿に不備がある場合には,受理せずに返却する.また,編集委員会の判断によっては,以下に示す通常の査読過程を経ずに返却する場合がある.


2. 担当編集委員の決定

編集委員長は,論文を受理した後,担当編集委員1名を選ぶ.


3. 査読者の選定

編集委員長は,担当編集委員の推薦に基づき,査読者2名を選ぶ.2名の査読者の専門分野は異なることが望ましい.担当編集委員は査読者に論文1部を送付し,査読を依頼する.査読を承諾した場合,事務局は査読報告用紙を査読者に送付し,1カ月以内に査読結果を担当編集委員および事務局に報告する.査読者が依頼を辞退した場合,同様の手続きに従い,新たな査読者を選定して依頼する.


4. 査読

査読者は以下の評価項目に基づいて査読を行う.ただし有用性,新規性は論文の種類ごとに異なる.
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会員の関心
言語処理学会の会員が関心を持つような話題を扱っているか?

信頼性
手法,実験設定,議論の展開などが論理的で信頼できるか?

構成と読みやすさ
論文の構成が適切で,一貫性があり,あいまいな表現がないか?

有用性と新規性
  1. 一般論文
    有用性
    学術的,工学的,または社会的に有用であるか?
    新規性
    従来の研究と比較してこの論文の位置付けを明確にしており,新しい知見が得られているか?
    ここでの新規性は,新しい技術,手法に限定しない.たとえば,言語資源の構築にあたっては基準や設計方針についての議論も含め読者にとって有益な知見があれば新規性があると判断する.また,既存手法をこれまでにない応用分野やデータに適用し,その結果についての考察によって新しい知見が得られていれば新規性があると判断する.
  2. 応用システム論文
    有用性
    構築されたシステムが,現実的問題へ対応できていることを可能な限り客観的に示すことができていることが望ましいし,客観的評価を含むものに対しては積極的に加点する.また,システムの性能を定量的に評価した結果を示さずとも,提案システムが実用面において十分有用であることは,実世界でどの程度利用されているかといった観点でも定量的に評価することができる.さらに,定量的な評価が,事情により示せない場合,その理由を明記した上で,しっかりとオーソライズされた定性的評価(たとえば,利用者によるアンケート結果等)を示すことによっても,有用性は示せる.
    新規性
    既存技術の組み合わせや統合であっても,組み合わせの新しさ,システム全体での新しさ,設計コンセプトの新しさ,設計・開発されたシステムで得られた知見の新しさ,などを新規性の対象とする.必ずしも全く新たに研究開発した技術である必要はない.
    その他
    理論上は問題にならないが,実用システムを開発する際には解決しなければならない問題,およびその解決方法と評価(または考察)は,非常に有益な知見であり,積極的に加点するべきである.
  3. 技術資料
    「新規性」は問わず,「有用性」を評価のメイン項目に据えて評価します.
    有用性
    学術的,工学的,または社会的に有用であるか?
  4. 解説論文
    有用性
    先行研究が十分に調査されているか?
    必要な文献が挙げられているか?
    当該領域の技術等の全体像が把握できるか?
    記述内容が具体的で信頼性のあるものと見なされるか?
    新規性
    新しい視点・観点でまとめられているか?
データ共有・再現性に対する考え方
論文中で利用したデータやプログラム等が公開されていることは必須ではないが,著者らが構築したコーパスやプログラム等が一般に公開されている場合には,有用性・再現性(信頼性)の観点から加点項目と考える.

先行研究に対する考え方
論文誌,口頭発表,プレプリントかどうかに関わらず,投稿時より3ヶ月以上前のものは原則,先行研究とみなす.ただし,査読にあたっては,次のように柔軟に考える.
  1. これら先行研究が3ヶ月以内のものであっても,論文内で関連研究として言及・議論することが望ましい.
  2. これら先行研究がプレプリントの場合には,3ヶ月以上前のものであっても,あまり他の論文で参照されていない場合には,先行文献調査が不十分と一律にみなすのではなく,ケースバイケースで判断する.

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査読者は以上の評価項目にしたがって査読をおこなった後,論文を以下の1つと判定し,必要に応じて付随意見および照会を査読用紙に記入し,担当編集委員に報告する.

A 採録
B 照会
著者に照会して回答または修正などを求め,改めて査読を行う.
B1 条件付き採録
照会は論文の本筋に影響しない部分的・かつ軽微なものに限る.
B2 照会後判定
誤り, 論旨不明, 疑問点, 論文としての形式不完全, 冗長, 追加記述の要など, 照会により改善の見込みが十分あり得る場合に限る.
C 不採録
以下の項に示す場合には,不採録とし,理由を付けて著者に返却する.
  1. 当学会の分野でない場合.
  2. 本質的な誤りがある,あるいは客観的に認知できない内容である場合.
  3. 内容の程度が低く,論文としての新規性,重要性がない場合.
  4. 他論文誌,雑誌に既発表,または公知の場合.定期刊行物(他学会協会,会社機関誌,商業誌など)に掲載されたものは既発表とするが,学会大会,研究会,シンポジウム,国際会議などの口頭発表に伴う資料については著作権所有者の許可を得ている場合に限り認める.
  5. 難解,形式不完全で改良される見込みがない場合.
  6. 原稿執筆案内の8項に抵触する恐れがあると当学会が判断した場合.

5. 査読結果の扱い

担当編集委員は,査読者からの報告に基づいて以下のいずれかの措置をとる.

  1. 担当編集委員の採否判定を判定理由とともに編集委員会に報告する.
  2. 必要な照会事項をまとめて著者に照会する.

担当編集委員は,いずれの場合も必要に応じて,両査読者と意見交換できる.


6. 照会

照会の場合,事務局は照会の内容を著者に伝え,その回答を待って,査読者に再査読を依頼する.照会への回答は文書で行う.照会事項に関連して原稿に手を加える場合は,変更箇所と変更理由を明示するとともに,変更した論文も事務局に送付する.


7. 採否の決定

担当編集委員は,判定報告にあたり,論文の各版と査読報告を編集委員会に提出し,編集委員会において査読内容を説明するとともに,担当編集委員としての採否の判断をのべる.

編集委員会は,担当編集委員からの報告に基づいて論文の採否を決定し,事務局から著者に結果を通知する.採録の場合はさらに掲載予定を伝えて著者紹介を依頼する.


8. 氏名の非公開

著者に対しては担当編集委員及び査読者の氏名や所属を公開しない.


9. 著者からの連絡等

著者からの問合せや投稿取り下げの連絡は事務局に対して行なう.


10. 編集委員の論文

編集委員は,自分が著者である論文に関する議事には参加しない. 編集委員長が著者である場合は,副編集委員長が編集委員長の役割を代行する.


以上の手順の概要を下に図示する.

  投稿     担当決定    査読依頼  査読報告    I.判定報告
著者─→編集委員会─→担当編集委員─→査読者─→担当編集委員─→編集委員会
                    ↑   及び事務局      |
                    |         ↓       |
               再査読依頼|      事務局  採否通知|
                    |   II.照会↓       ↓
                   事務局←────著者      著者
                        回答

査読過程にかかる時間の目安
(1)投稿から査読者決定までは3週間以内
(2)査読報告期間は1か月以内
(3)査読報告から判定報告は1週間以内
(4)事務局照会から改訂論文投稿は「通常号編集スケジュール」に従う